財産を独り占めし、協議に一切応じようとしない相手方との和解を成立させた事例

依頼者:女性、50代後半、大阪市内在住

被相続人:依頼者の父

相続人:被相続人の子A・B・C(=依頼者)

主な相続財産:自宅不動産・田畑・預貯金

遺言書:なし

相談に至る経緯

相続人Aは、被相続人の死亡時まで被相続人と同居していたが、仕事をせず、もっぱら被相続人の財産により生活していた。
被相続人は、先祖代々の不動産を多く所有していたが、そのほとんどが田畑であり、すぐに収益に結び付くものではなかった。
BとCはいずれも女性であり、結婚とともに生家を出て、その後は被相続人と生活をともにすることはなかった。
被相続人が年をとり、病弱な状態になってからは、Aがもっぱら被相続人の財産管理を行い、BやCはその内容を一切知ることができなかった。
被相続人が死亡した後、Aは被相続人の財産を独り占めし、BやCから遺産分割を求めても、協議に一切応じようとしなかった。
かかる状態の下、遺産分割協議の進め方に苦慮したCが当事務所に相談に来所され、受任に至りました。

事件処理の経緯

弁護士が依頼者の代理人としてAと連絡をとり、直接遺産分割の協議を行うことを試みましたが、返事さえない状態でした。
そこで、A及びBを相手方として遺産分割調停を申し立てました。その際、Bの方が大阪に近い場所に居住していたため、Bの住所地を管轄する裁判所に調停を申し立てることにしました。
調停の準備と並行して、弁護士から金融機関に対して照会を行い、相続財産である預貯金の多くを把握することができました。また、不動産業者に依頼して、相続財産である不動産を現地で確認してもらい、実際の利用価値や想定される売却価格を詳細に査定してもらいました。これらの調査結果を、調停において当方より積極的に開示し、Aの説得に努めました。
Aは、調停開始当初は、不動産を売却して現金で分割することや、不動産を現物分割することを拒否し、不動産を全部取得することを希望しました。他方で、預貯金の多くをBやCが取得することも、Aの生活が立ちいかなくなることを理由に拒否しました。
しかし、調停の途中から弁護士がAの代理人につき、しかも当方から不動産の客観的な価値に関する資料等を提出すると、Aも譲歩の姿勢を見せるようになり、最終的には調停が成立しました。

事件の解決内容

最終的には、不動産を全部Aが取得し、預貯金をBとCが取得するとともに、Cが少額の現金をAに支払う、という内容で和解が成立しました。

所感

土地、特に現在投資物件として利用されていない土地が相続財産にある場合は、その土地の活用方法に関する相続人間の思惑の違いにより、遺産分割の協議が難航してしまうケースがよくあります。その場合は、相手方がどのような活用用方法を考えているのか、その本音を早期に把握し、さらに、現実にそのような活用が可能か、専門業者の力も借りて、できる限り早く調査することが重要だと思われます。