不動産分割において、粘り強く交渉を続け、調停をまとめた事例

依頼者:男性、60代後半、大阪市内在住

被相続人:依頼者の兄

相続人:被相続人の弟(=依頼者)・妹A

主な相続財産:建物1棟(アパート)とその敷地

遺言書:なし

相談に至る経緯

被相続人は若いころから病弱で、元々母親と2人で生活してきた。
母親の死後は、被相続人はA家族と生活をともにしてきた。
依頼者は、成人後は大阪市内に転居し、母親や被相続人・Aとともに暮らすことはなかった。
相続財産である不動産は、先祖から引き継いできた不動産であったが、父母死亡後は、長男である被相続人が相続。
相続財産である土地上に、長男名義のアパートと、Aの自宅、依頼者名義のアパートが建っている状況。また、駐車場もあり、賃料はAが被相続人の代わりに管理してきた。
被相続人死亡後、依頼者とAはともに不動産を現物分割することを望んだが、具体的な分割方法で意見が合わず、依頼者が解決方法について相談に来所され、受任に至りました。

事件処理の経緯

弁護士が依頼者の代理人としてAと直接会い、不動産の分割方法について協議する機会を設けましたが、見解の相違が大きく、協議はまとまりませんでした。
そこで、遺産分割調停の申し立てを行いました。
調停では、不動産の分割方法を具体的に図面に示し、分割した場合の不動産の評価額の違いも考慮した上で、依頼者とAが取得する不動産の価格が等価となるような分割方法を具体的に提案して、協議が前に進むよう努力しました。
期日の途中からは、Aも弁護士を代理人として立て、代理人間で感情を排して冷静な協議を進めることが可能となりました。また、不動産取引の専門家である調停委員も、専門的立場から積極的に仲裁に乗り出してくださいました。そのため、調停の途中から協議が前に進むようになり、最後には調停がまとまりました。

事件の解決内容

最終的には、調停の開始当初に当方が図面で示した方法を基礎としながら、Aの自宅敷地の確保を考慮して、若干Aが取得する面積を広くした方法により不動産を分割するという内容で調停がまとまりました。

所感

遺産分割調停においては、積極的かつ具体的に遺産分割案を提示し、さらに、そのような案を希望する内容についても、できる限り分かりやすく、かつ説得的に説明した上で、粘り強く交渉を続けることが重要と実感した。
最終的には、相手方どのようにすれば納得するか、落としどころを常に考えて交渉することが大事であると感じた。また、相手方に弁護士がついている方が、そのような交渉を進めることが容易になるケースが多いと思われる。