弁護士が相続人の代表者として不動産の売却手続きと債務の返済手続を行い、換価分割を行った事例
依頼者:80代 女性
被相続人:依頼者の兄
相続財産:不動産、負債
相談に至る経緯
兄が亡くなり、遺産は自宅不動産のほかには不明で、相続人も遠方に分散しており遺産分割を進めようにも誰がどのように進めるべきかがわからないという事案で、相続人の一部から遺産分割調停の申立てが行われました。
調停を申し立てられた相手方である相続人は認知症を患っており、その成年後見人として弁護士が遺産分割調停に出席し、本人の代わりに遺産分割の協議を行うことになりました。
事件処理と解決内容
調停では、遺産のほとんどを占める不動産を取得したいと考えている相続人は誰もいないことが確認できたため、弁護士から不動産を売却し、売却代金から諸費用を控除した残額を法定相続分ずつ分配する方法(換価分割)を提案しました(最終的にこの案で調停成立)。
もっとも、相続人が複数人いること、被相続人には細かな負債等がある上、預貯金などの積極財産には不明な点が多いことから、まずは遺産調査を行ったうえで預貯金等を解約し、現金化した財産を代表者が専用口座で一元管理するとともに負債の返済を行い、不動産の売却代金と併せて分配を行う必要がありました。
そこで、それらの手続を弁護士が代表者として行っていくことになりました。
まず、被相続人の自宅不動産に立ち入り、預金等の資産や債務を有していた可能性のある機関に照会をかけるなどして財産調査を行いました。
そのようにして積極財産と負債を確定し、預り金口座で一元管理して積極財産を集約するとともに、債務の弁済を行いました。
次に、不動産は利便性の悪い場所ある広い土地のため、2つに分けて売却する手続を行いました。
不動産が遠方の土地であることもあり、これらはほかの相続人の協力もなければ進めることは困難でしたが、弁護士から相続に関する進め方を順を追って説明したことにより、ほかの相続人にも納得いただき、自宅内の動産(ピアノなど)も含め高値での売却に成功しました。
そのうえですべての遺産と返済状況、経費の負担状況を一元管理し、財産状況の認識を統一したうえで、最終的に法定相続分に基づいて分配を行うことができました。
弁護士のコメント
遺産分割には、相続人間に明確な対立がなくても、遺産が不明である、負債が不明であるなどの様々な細かな問題が発生し、それぞれの手続も非常に煩雑です。
また、代表者として一元の管理や負債の返済を行うにしても、公正に行われているのかなどの疑義がほかの相続人から出され、紛争に発展することもあります。さらに、代表者自身が法的な観点からどのように処理したらよいのか迷う場面も多く出てきます。
この点、専門家である弁護士がこの役割を担うことで、相続人の協力も得やすく、各種調査も弁護士の権限で行い、要所要所で専門家として適切な判断を行いながら、煩雑な手続をスムーズに進めることができます。
相続人自身も高齢であったり仕事をしている中で、相続人の代表者として、煩雑で専門的な財産分配の手続を行っていくのは大変なことです。たとえ紛争が発生していない事案であったとしても、弁護士に手続の代行を依頼するメリットは非常に大きいと言えます。
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