現住所が分からなかった相続人を特定し、遺産整理を行うことに成功した事例

依頼者:女性、60代前半、大阪市内在住

被相続人:依頼者の夫

相続人:被相続人の妻(=依頼者)・被相続人と依頼者の間の子A(男性、成人)・被相続人と前妻の間の子B(女性、成人)

主な相続財産:不動産、被相続人が経営していた会社への貸付金、預貯金

遺言書:あり(公正証書遺言)=すべての相続財産を依頼者とAに相続させるという内容

相談に至る経緯

被相続人は、30年以上前に前妻と調停離婚。
被相続人と前妻の間には離婚時に子Bがおり、成人まで養育費を合意どおり支払ってきた。ただし、直接の交流はなく、連絡も取り合っていなかった。
被相続人は、不動産会社を経営していたが、晩年は事業を縮小し、賃貸している不動産からの少額の賃料収入があるだけの状態になっていた。
被相続人は、経営する会社の資金繰りのために、個人資金を会社に多く貸し付けており、死亡時にはその金額は多額にのぼっていた。
被相続人は、死の前年に公正証書遺言を作成。被相続人の死後に、遺言通りに遺産分割を実施。
被相続人の死後、依頼者が被相続人の死の事実を知らせるためにBと連絡をとろうとしたが、連絡先が分からなかったため、弁護士に対処方法を相談するに至りました。

事件処理の経緯

弁護士において戸籍と付票を調査したところ、Bの現在の住所が判明しました。
Bに知らせることで、遺留分減殺請求が行われる可能性があることも依頼者にご説明しましたが、被相続人の気持ちを考慮し、書面で通知をすることになりました。
遺留分減殺請求の権利行使期間の起算点を明確にするため、配達証明付き内容証明郵便で発送することにしました。文面は、丁重な内容にしつつ、被相続人の死と遺言書の内容を端的に知らせるものにとどめました。
その後、Bが代理人をつけ、相続財産の開示を求めてきたため、弁護士が財産関係を整理し、Bに開示しました。
開示した財産関係に関し、特に問題になったのは、被相続人の会社に対する貸付金の評価でした。
この点については、会社の顧問税理士の意見も聴取した上で、会社の実態を相手方に開示し、最終的には、額面額ではなく、当方の主張に比較的近い数字で合意に達することができました。
会社の財務諸表等の確認・評価・検討も必要であったため、少し協議に時間がかかりましたが、最終的には協議によって合意に達することができ、依頼者とAが一定額をBに支払うという内容で解決することができました。

所感

被相続人の死亡の事実を知らないBに対し、当方から連絡をとるべきかという点については、少し迷いました。
しかし、最終的には、被相続人がBのことを気にかけていたということも依頼者からお聞きし、事実はきちんと知らせるべきであると考え、書面を送付することにしました。
結果的には、Bに代理人がつき、感情を排して冷静に議論をすることができましたので、通知をしてよかったと思います。
経営している会社への貸付金をどのように評価するかという点は、難しい判断が伴います。この点については、税理士・会計士の力を借りることが重要だと実感しました。